近年稀にみる快進撃

奇抜なリム形状を持つホイールが存在感を増している。
嚆矢はジップのNSWシリーズだ。2016年末にデビューした454 NSW と858 NSWの特徴は、リム内周が鋸のように波打っている「Sawtoothリム」。その設計意図や試乗記はこの記事で詳述した。

そして、ここ数年機材好きの間で話題に上ることが多いのが、NSWにそっくりなプリンストン カーボンワークスである。

このホイールメーカーに関しては、ライターとしてはネタの宝庫だ。
イネオスが突然使い始めた謎のホイール。
奇抜な波形リム。
フィリッポ・ガンナの世界選手権制覇。
返す刀でアワーレコードも達成。
グランツールでの活躍。
しかもイネオスは、シマノというビッグメーカーからサポートを受けながらも、契約外の機材としてプリンストン カーボンワークスを選んでいる。その結果のこの快進撃。新興メーカーとしては夢のようなサクセスストーリーであり、ドラマチックな成功譚は調べればいくらでも書ける。ベタな脚本で映画化だってできそうなくらいだ。

ロードレースの現場や市場におけるシェア争いの場外乱闘として、ジップとの法廷闘争もそれらのいいスパイスとなった。ジップを傘下に収めるスラム社が、プリンストン カーボンワークスの波形リムがジップ・NSWのリム形状に関する特許を侵害しているとして提訴、2年の月日を経て裁判所は「プリンストン カーボンワークスはスラム社の特許を侵害していない」と判断、プリンストン カーボンワークスが勝訴したのだ。そこまでいいネタを提供してくれなくてもいいんですが。そう言いたくなるほどである。

本稿では、海外メディアの二番煎じでもあるそれらを繰り返す愚は避ける。大切なのは、モノとしてどうなのか、使ってどうなのか、だ。

とはいえプリンストン カーボンワークスは日本に代理店が存在しない。ということは試乗用ホイールも用意されていない。それなのに今回の試乗を実現できたのは、人気ブログ「IT技術者ロードバイク日記」の執筆者、IT氏のおかげである。ジップの記事(前編後編)を公開した後、「プリンストン カーボンワークス、お貸しできますので試乗しませんか?」とお声がけいただいたのだ。IT氏はプリンストン カーボンワークスのウェイク6560を購入、決戦用ホイールとして使用されている。

個人所有の機材の試乗は色々と気を遣うことも多いのだが、今回はまたとない貴重な機会でもあり、お言葉に甘えることにした。

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