新型ターマックが背負う期待と重責。300kmの果てに見えたものとはー(前編)
意図的なチラ見せで世のロード乗りをザワつかせていた新型ターマックが、ついにヴェールを脱いだ。SL6と同等の軽さと現行ヴェンジに迫る空力性能を手にしたらしく、「ヴェンジなんかもう必要ない」と鼻息荒い。ターマックSL7は、激化している新世代万能ロード戦争を終わらせる一台なのか。編集長の安井がじっくり乗り込んで判定を下す。
2020.08.24
ロヴァールCLXⅡを語り尽くす
拡散した嘘、隠された良心
2022年5月下旬。ROVALの「アルピニストCLX」と「ラピーデCLX」がそれぞれモデルチェンジをうけ「アルピニストCLXⅡ」、「ラピーデCLXⅡ」として発表された。「チューブレスレディへの対応」が一番のトピックではあるが、重量は増加し見た目は前作から変更なし。グラフィックには「Ⅱ」の文字すらないので、知らない人から見たらモデルチェンジしたことすら気付かないだろう。今回La routeで取り上げるのは、そんなロヴァールのホイール2種である。CLXⅡに加え、旧型のCLXもお借りしてLa routeの安井行生と栗山晃靖がとっかえひっかえ試乗。記事内ではインプレッションに加え、一部で話題になったサガンのホイール破損事件や海外メディアのあの記事についても話し合った。
2005年にスペシャライズド傘下に入るまで、独立したホイールメーカーとして存在していたロヴァール。各人のインプレッションに入る前に、実は手組全盛の時代に完組ホイールをリリースするなど、先進的な取り組みを行っていたロヴァールについて語るところから対談はスタートした。
栗山:そもそもロヴァールがどんなメーカーなのかをおさらいしましょうか。ここ最近のロヴァールしか知らないという方もいると思うので。
安井:そうですね。ロヴァールといえばスペシャライズドのイメージが強いと思いますが、もともとは1970年代にフランスで誕生したホイールメーカーです。完組みホイールというとマヴィックのヘリウムやコスミックが一番乗りというイメージがありますが、ロヴァールが完組みホイールを作ったのも相当早かったそうです。僕が自転車を始める前のことなので人づてに聞いた話ですし、スペシャライズド・ジャパンに聞いてもインディペンデント時代の情報はほとんど残っていないようですが、ハブもスポークもリムも完全独自設計で、かなり先進的な作りだったとか。
栗山:そうした実績もありながら、2005年にスペシャライズド傘下に入ったことでロヴァールの第二章がはじまったわけですね。
安井:スペシャライズドがホイールも含めた完成車ビジネスをやろうと考えたときに、既存のメーカーを買収するのが手っ取り早かった、ということでしょう。現にそれで成功している。その辺りはトレックとボントレガーの関係に近いですね。
栗山:最近はスペシャライズドに限らず、他メーカーのバイクに乗っている人がロヴァールを履かせている姿をよく見るようになりました。
安井:以前のロヴァールは、指名買いするほどのブランドではなかったんですが、スペシャライズドがめきめきと存在感を増していったのと同期するように、ロヴァールのモノもよくなっていった印象です。
栗山:それっていつ頃からでしたっけ?
安井:ここ6、7年くらいでしょう。僕は2012年くらいからスペシャライズドのローンチに参加してますが、当時のロヴァールは「ターマックを買うと付いてくるホイール」という印象しかなくて、悪くはないんですけど車体に合わせて作り込まれている感じはしませんでした。それが「あれ、ロヴァールってよくね?」というふうに印象が好転したのは2015年に登場したラピーデCLX40あたりから。2017年のCLX32とか2019年のCLX50もかなり良かった。
栗山:そういえば旧型のCLXを大絶賛してましたね。
安井:当時のインプレでは軽量ホイールのアルピニストCLXを「ディスクブレーキ用ホイール=重い、軽すぎるホイール=走らない、というイメージをぶち壊すゲームチェンジャーだ」とまで言いました。実際めちゃくちゃよく走りましたし、何よりバランスがいい。扱いにくい部分もないし、これ1本で何でもできるなと。
栗山:エアロホイールとしての立ち位置のラピーデCLXの印象は?
安井:同じく大絶賛しました。ラピーデはフロントのリムだけ異常に幅広いのが特徴。おそらく幅広のリムが空気をかき分けることで、スポークにできるだけ気流を当てないような設計なんだと思います。スポークはどうしたって空気抵抗の発生源になりますし、ディスクブレーキになったことでスポーク本数を減らすことができなくなりましたから。実際に空力を実感できましたし。
栗山:スペシャライズドの風洞実験施設「ウィン・トンネル」の存在が、ロヴァールの開発に寄与しているのは間違いないですね。ちなみに安井さんがホイールを試していて、空力の良し悪しを体感できるのはどんなときですか?
安井:完全に平地です。40〜50km/hで走ってみて、そのときにかかる脚への負担や速度維持のしやすさで空力効果を確かめています。あくまで体感なので数値化できないんですが、前作のラピーデは明らかに違いを感じました。エアロホイールとしてすごく優秀なのに、カチカチで乗りにくいということもない。こりゃ売れるよって思いましたね。
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意図的なチラ見せで世のロード乗りをザワつかせていた新型ターマックが、ついにヴェールを脱いだ。SL6と同等の軽さと現行ヴェンジに迫る空力性能を手にしたらしく、「ヴェンジなんかもう必要ない」と鼻息荒い。ターマックSL7は、激化している新世代万能ロード戦争を終わらせる一台なのか。編集長の安井がじっくり乗り込んで判定を下す。
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2020.10.26
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2022.03.28
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