僕がこの仕事に就くまで、そして就いてから今まで、何人もの人のお世話になりました。その中の何人かは恩人と呼ぶべき人です。岩田さんはその中の一人。

そんな人と、いつか自転車メディアとジャーナリズムについてがっつりと話をしてみたかった。それがこの企画で実現しました。

現役編集長ですから、立場的に話しづらいこともたくさんあったと思います。でも岩田さんは包み隠さず話してくれました。自転車メディアの中心地にいる方なのに、よくここまで話してくれたなと思います(広告主のことなんて、メディア関係者が最も話したくない話題でしょう)。原稿にする際も、僕は変にマイルドにしたり、都合の悪いことを隠したりはしませんでした。この対談は、会話の内容がほぼそのまま文字になったものです。たぶん、これを読んで気分を悪くしているメディア関係者は少なくないでしょう。

このような対談企画の場合、参加者には掲載前に原稿確認をしてもらうのですが、岩田さんは「内容に関して口を出すつもりはないから」と一言。実際、固有名詞の表記以外、修正はありませんでした。男らしい人です。でも、ずっと心配されていたのが、「読者の方は面白がってくれるんだろうか?」ということ。

前編の締めでも書きましたが、これは言ってみれば業界の内輪話。でも僕は、La route読者の方々にはこういうことを知っておいてほしかったんです。このLa routeの会員になってくださっている皆さんは、既存メディアに不満を持っている方、既存メディアにはない種の情報を求められている方が多いと思います。でも、各メディアのビジネスを知り、それぞれの特性を知ることで、読み分け方が分かるようになります。そうなれば、自分が欲している情報、信用に値する情報にアクセスしやすくなります。それは、自転車人生の質を上げることにつながると思うんです。

ボクたちこんなに頑張ってるんだから自転車メディアのことを優しく見守ってね、なんて甘っちょろいことを言うつもりはありません。ダメな記事はダメ。ダメなメディアはダメ。そう思います。

でも、それは読者の皆さんにご自身の基準で正しく判断してほしいと思います。その判断を下すための材料になればいいと思い、この記事を書きました。

(安井行生)

岩田淳雄