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これら新世代万能ロードに乗って強く感じたのは、「最適化」というキーワードでした。よくよく考えれば、何一つとして新しい技術は使われてないんです。ロードに初めてカムテールが使われたとか、斬新な可動機構が盛り込まれたとか、グラベルロードという新しいカテゴリーが誕生したとか、そういうことではありません。カムテール、ケーブル内蔵システム、コンパクトリヤ三角によって柔軟性を上げたシート周り。それら既存の技術を組み合わせて条件に対して最適化しただけ。それが新世代万能ロードです。しかし、その最適化レベルが非常に高い。だから注目したんです。

エンジニアは相当頑張ってる。そう思います。2010年代、乗り物としての根幹を揺るがすような変化がいくつもあったにもかかわらず(エアロの波やディスクブレーキ化やワイドタイヤ化など)、肝心要の走りがグズグズになったのは最初の数年のみで、すぐに走行性能を磨き上げ、トップモデルに関しては今やどれもビシッと走るようになっています。

今回集めた5台にも、大きな欠点はありませんでした。“忖度なし~”と謳って始まったこのLa routeに罵詈雑言の嵐を期待されていたかもしれませんが、La routeの目的は、ゴシップ記事や品のない罵詈雑言を書くためではなく、「いいものはいい、悪いものは悪い」という忖度なしの記事をつくること。だから、今回のように欠点が少ないならそう書くしかないんです。当たり前ですけど。

そのかわり(?)、個人的に不満の残る2点をしつこく指摘しました。最適化というなら、ここだけ最適化レベルが低い。記事には書きませんでしたが、ケーブルが通るスペースを確保するためにフォークコラムを長方形断面やD型断面にするモデルも気になります。どう考えてもコラム剛性には不利ですから。「カムテールシートポスト&内蔵シートクランプ」同様、「得るものに対して失うものが大きすぎる設計」だと個人的には思いますね。

果たしてこれらは技術屋がやりたかったことなんでしょうか。マーケティング屋の御託(「ケーブル内蔵にしないと売れない時代ですよ」とかなんとか)とデザイナーの暴走(「カムテールにしてシートクランプ埋め込んだらスッキリするしナウいしクールだぜ」とかなんとか)の結果……という気がしないでもありません。もしそうだとしたら、下らない流行です。

さて。実は、このメディアを始めるにあたって一番の懸念だったのが、「モノを借りられるのか」なんです。「忖度しません好き勝手書きます」なんて言ってるメディアに、大事な試乗車を貸してくれるのだろうか―。でも、意外なことに各代理店は電話一本でハイエンドバイクを快く貸してくれました。

そんな各代理店の担当者の方々に後ろ足で砂をかけるようなもんなんですね、バイクをけなすというのは。人としてなかなかツラいものがありますが、かといって会員になってくださった皆さんを裏切るのはもっとツラい。精神的にキツい稼業ではありますが、始めたからにはやらねばなりません。

(安井行生)

IZALCO MAX DISC 9