MERIDA REACTO TEAM-E試乗記 変わるべきもの、変わるべからざるもの
前作のデビューからたったの3年。しかし、その3年の間にエアロロードを取り巻く環境は大きく変化した。ディスクブレーキに完全移行しただけではない。「空力よけりゃそれでいい」から「軽さ・扱いやすさ・ハンドリングも優れていて当然」へ。「高速域特化マシン」から「山岳以外をカバーする万能バイク」へ。そんな中、屈指のビッグメーカー、メリダはリアクトをどう仕立ててきたのか。
2020.11.09
主要車種の試乗を通してメリダの今を考える
隠された黄金比
機材や自転車界隈のあれこれについて語り合う「La route Talk」。第7回のテーマは「メリダ」。正式デビュー前のグラベルロード、サイレックスがグラベル世界選手権で優勝するなど話題にはなっているが、スペシャやトレックやピナレロのような確立されたイメージがなく、どことなく存在感が薄い気がする。一体なぜだろう? 伊豆のメリダXベースで開催されたメディア向け試乗会、メリダ・プレスミーティングに参加した安井と栗山が、リアクト、スクルトゥーラ、スクルトゥーラ エンデュランス、サイレックスに試乗し、メリダの意味と価値を語り合った。
スペシャはこんなメーカー。トレックはこんな感じ。ピナレロはこう、コルナゴはこう。デローザは、ジャイアントは、ビアンキは、キャニオンは……。最先端。真面目。華やか。レーシー。クラシック。ストイック。クール。洗練。豪華。高級。創業者の情熱。有名な成長ストーリーに歴史と伝統。規模が大きなメーカーは、どれも特有のイメージを纏っている。きりりと明確な一つの像が浮かび上がる。
メリダはどうだろう。最先端かもしれないし真面目でもあるしレース活動も盛んだし、華やかで豪華ではないかもしれないけれど、コスパに振り切ったというわけでもないし、歴史と伝統が豊富という印象もないし……。
どうにもイメージが焦点を結ばない。ピントが合わない。ここまで規模が大きいのに、バーレーン・ヴィクトリアスというチームがあり新城選手も乗ってるのに、国内ではブリッツェンも健闘してるのに、脳内に投影される像がなぜか漠然として曖昧模糊のまま。自転車業界に身を置いて長く、しかも一度はスクルトゥーラの走りに惚れて所有していたことがある筆者でさえそうなのだ。一体なぜだろう。
そんなことを考えながら、早朝に都内を出発して、朝8時すぎにたどり着いたのは、伊豆のへそ。その変わった施設名の通り、伊豆の国市のほぼど真ん中にある道の駅である。そこに併設されているのがメリダXベース。メリダが運営するサイクリング施設である。ここで行われる新型サイレックスの発表会を含んだ試乗会、メリダ・プレスミーティングにLa routeもお呼ばれしたのだ。ここでメリダの2024シーズンのロード系モデルに一気乗りし、メリダというメーカーをもう一度見つめ直してみたい。
続きを見るにはログインしてください。
前作のデビューからたったの3年。しかし、その3年の間にエアロロードを取り巻く環境は大きく変化した。ディスクブレーキに完全移行しただけではない。「空力よけりゃそれでいい」から「軽さ・扱いやすさ・ハンドリングも優れていて当然」へ。「高速域特化マシン」から「山岳以外をカバーする万能バイク」へ。そんな中、屈指のビッグメーカー、メリダはリアクトをどう仕立ててきたのか。
2020.11.09
グラベルロードというカテゴリーが盛り上がり始めて数年。各社から個性的なバイクが次々と登場し、市場は戦場の様相を呈している。そんな流れのなか、スペシャライズドの「メディア向けグラベルバイク試乗会」が開催され、同社の「クラックス」「ディヴァージュ」「クレオ」というまったく性格の異なる3台を同条件で比較させていただく機会を得た。ロードバイクを主戦場とする安井行生は、その3台に乗って何を思い、何を感じるのか。3台と3つのホイールをとっかえひっかえした、グラベル尽くしの試乗会レポートをお届けする。
2022.02.07
「今年を代表する1台」を選出する日本バイシクル・オブ・ザ・イヤー2022(以下BOTY2022)。昨年に続き、この業界最大のアワードイベントにLa route編集長の安井が参加した。今年から選考委員に加わった自転車ジャーナリストの吉本 司との対談で、ノミネートされた10台の印象と、2021年のロードバイクについて語る。前編は、選考基準に関する一考察と、上位5台について。
2022.01.20
キャノンデール初のフルカーボンロードフレーム、スーパーシックスの登場から16年。その進化形であり世界最軽量バイクとして一世を風靡した初代スーパーシックス エボから12年。スーパーシックスに施される“進化”は、はや4度目となった。エアロロードであるシステムシックスの存在感が薄くなり、エンデュランスロードのシナプスを“競争しない自転車”にしてしまった今のキャノンデールにとって、4代目のスーパーシックス エボは全方位をカバーする万能車でなければならない。同時に、今年から立ち上がったキャノンデールの高級ラインであるLAB71のイメージリーダーとしての任も課す。そんな難しいテーマを開発陣はどう料理したのか。LAB71とハイモッドの試乗を通して、これからのキャノンデールを考えた。
2023.06.05
量産ディスクロードながらフレーム重量500g台、完成車重量5kg台という軽さを実現し、大きな話題を呼んだスペシャライズド・エートス。La routeでも3回に渡ってエートスの記事を公開した。しかしLa routeはハイエンドバイク専門メディアではない。近年稀に見るエポックメーカー、エートスならミドルグレードの試乗もすべきだろう。エートスの購入を本気で検討しているLa routeのテクニカルディレクター、藤田宗親を加え、リアルな買い手目線のエートスグレード間比較試乗記をお届けする。
2021.07.19
優秀な動力伝達性に加えて空力性能も身に付け、あの名車の誉れ高いヴェンジを廃版にしてしまうほどの万能バイクになったターマックSL7。それがまだ一級の性能を維持しているにもかかわらず、2023年、スペシャライズドはターマックをSL8へと代替わりさせた。レーシングバイクとして高い完成度を誇っていたSL7を、どう進化させたのか。群馬県の嬬恋で行われたプレスローンチに参加した安井が、Sワークスに乗り、プレゼンを聞き、現代ロード界の最重要モデルであるターマックについて考え、評価を下す。SL8に埋め込まれた開発陣からのメッセージとは?
2023.08.14
La routeの制作メンバーが気になるor自腹で買ったアイテムをレビューする「LR Pick up」。第14回は、ユーザー直売による高いコストパフォーマンスを武器とするキャニオンの新型アルティメット。“エアロ”と“グラベル”が存在感を増す中、キャニオンは軽量万能バイクをどう進化させたのか。
2022.12.14
「今年を代表する1台」を選出する日本バイシクル・オブ・ザ・イヤー。8名の選考委員によって選ばれた10ベストバイクを同条件で乗り比べる最終選考会を経て、遂に2023年度の受賞車が決定した。La routeでは昨年同様、このアワードイベントに参加した自転車ジャーナリストの吉本 司とLa route編集長の安井行生の対談で、ノミネートされた10台の印象と2023年のロードバイク界について語る。前編は、選考の難しさと、上位5台について。なぜ吉本と安井は、あのバイクに3点を投じたのか。
2023.03.20
La routeの制作メンバーが気になるor自腹で買ったアイテムをレビュー、100点満点で評価を下す連載「LR Pick up」。第8回は、ユーザー直売による高いコストパフォーマンスを武器とするキャニオンを取り上げる。安いだけでなく、価格以上の走りと端正なルックスで多くの自転車乗りに愛されているキャニオン。モデルチェンジしたばかりのエンデュランスロード、新型エンデュレースCFの完成度は?
2022.04.22
直販という販売方法とドイツ人ならではの質実剛健な作りで、瞬く間に世界のトップブランドへと上り詰めたドイツの自転車ブランド、キャニオン。日本でいちはやくキャニオンを手に入れ、これまで通算5台も自腹で購入するほどキャニオンに魅せられた自転車ジャーナリストの吉本 司が、自身のキャニオンへの想いとともに、新型エアロードCF SLX 8について綴る。
2021.03.01
La routeの安井行生と栗山晃靖が機材や自転車界隈のあれこれについて語り合う「La route Talk」。第1回目は新型のトレック・ドマーネを取り上げる。ピュアロード、エアロロード、エンデュランスロード、グラベルロード、オールロード。ロードバイクのカテゴリーが多様化し続ける一方で、それぞれの棲み分けはどんどん曖昧模糊になっている。その中でもとりわけ存在感が薄くなりつつあるのが、グラベルロード人気の煽りを食っている様相のエンデュランスロードだ。今回、第4世代となった新型ドマーネで安井と栗山が約70kmのライドを敢行し、その印象とエンデュランスロードの存在意義をあらためて語ることにした。街中、グラベル、峠を走った先に見えた、エンデュランスロードの行く末とは。
2022.12.19
ここ数年はずいぶんと積極的に動いているホダカのオリジナルブランド、コーダーブルーム。今春、La routeがホダカのキーマン2人にインタビューを行って記事化した際には、「日本ブランドとして海外ブランドにも負けない価格帯にチャレンジしていく」「目標は彼らと同レベルの戦いに踏み込んでいくこと」という発言が飛び出した。インタビューから数カ月、その“チャレンジ”、“目標”が具現化したようなニューモデル、ストラウス プロ レース2が発表された。果たしてその実力は如何に。試乗&開発者インタビューを通して、コーダ―ブルームの真価に迫る。
2023.10.09
「今年を代表する1台」を選出する日本バイシクル・オブ・ザ・イヤー。8名の選考委員によって選ばれた10ベストバイクを同条件で乗り比べる最終選考会を経て、遂に2023年度の受賞車が決定した。La routeでは昨年同様、このアワードイベントに参加した自転車ジャーナリストの吉本 司とLa route編集長の安井行生の対談で、ノミネートされた10台の印象と2023年のロードバイク界について語る。後編は、吉本も安井も点を投じなかった下位5台について。点を投じなかったからこそ、言いたいことがたくさんあった。
2023.03.20
S5を発表したばかりのサーヴェロが、返す刀で伝統のネーミングを復活させた。かつて強豪選手が乗りレース界で暴れまくった名車であり、現代のエアロロードの始祖とも言えるソロイストである。ただし、当時のソロイストの精神をより濃く受け継ぐのはS5だ。空力を追求し、グランツールで華々しい勝利を挙げるS5こそ、ソロイストの皇位継承者に相応しい。では、新型ソロイストとは一体なんなのか。名ばかりの復活なのか、それとも――。安井行生がS5、R5、カレドニアと比較試乗し、新型ソロイストの存在意義を考える。
2022.12.26