Canyon Endurace|CF7 “先鋭”以外の全てがある
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2022.04.22
CANYON ENDURACE CFR試乗記
不完全な完全体
2014年にデビューした初代エンデュレースは、10年近くラインナップされ続けるという異例のロングセラー商品となった。2022年、2代目エンデュレースCF/ALが発表される。トップモデルからではなく、ミドル~エントリーグレードが最初にヴェールを脱ぐという変わった順番だ。そして今年、遂に2代目エンデュレースの上位グレードであるエンデュレースCFR/CF SLXがデビュー。これにてエンデュレースは完全に第2世代へと移行した。CP0018エアロコックピットによって空力性能が向上し、トップチューブにストレージが設けられ、走行性能と拡張性がさらに高められた新型エンデュレースCFR/CF SLX。CFRでロングライドをこなした安井は、あまりに高い完成度にほとんど降参しながらも、「でも絶賛はしない」と言う。その理由とは?
それにしても、キャニオンはなぜこんなモデル名にしたのだろう。
エアロロードだからエアロード。レースもできるエンデュランスロードだからエンデュレース。究極の軽さを目指したからアルティメット。スピードを追求したからスピードマックス。
マドンとかターマックとかドグマみたいにもうちょっとひねったらいかがでしょうか、と進言の一つでもしたくなる安直なネーミングだ。
思い当たる節はある。その売り方だ。キャニオンは基本的に直販だから、お店で識者に相談するというプロセスが抜ける。だから直感的に目的を判別しやすいモデル名を付けたのだろうか。まぁその基準でいくとグレイルとかグリズルの説明が付かないが、これはこの2車はコンセプト的に近いので、あえて分かりにくいモデル名にしてしっかり迷わせる、という作戦なのかも。
せっかく分かりやすい名前にしたのに、存在として分かりにくいのがエンデュレースである。アドベンチャーバイクのグリズル、グラベルレース用のグレイルという2モデルがあり、アルティメットが太いタイヤを履き快適性を高める中で、それらの間に挟まれる格好で「軽い悪路まで守備範囲に加え始めたエンデュランスロード」という存在は、中途半端にみられるようになった。こういう状況では、うっかりするとイソップ寓話の「卑怯なこうもり」のように、どっちにもなれる代わりに、どっちつかずにもなってしまう。
そもそも、高い速度域を想定せず、安楽なフォームを取らせるためにハンドルを高めにし、直進安定性を重視し、太いタイヤを履かせて俊敏性・軽量性より安定性・快適性に重点を置く、という設計思想は、現代のグラベル系バイクとエンデュランスロードで重複する。
評者としては、開発リソースを絞るためにエンデュランスロードはグラベルロード/オールロードに統合され、エンデュランスロードというカテゴリは消滅するのでは、と予測したりもしていた。
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