ミドルグレードの現実

安井:この連載の第1回で、ディスクロードの必要性や問題点などについて触れましたが、個人的には思った以上にロードバイクのディスク化が早く進んでおり、そして思った以上にディスクロードは早く進化しているという印象です。

小畑:ハイエンド帯はね。

安井:そう。今の問題はそこなんです。各メーカーのトップモデルはだいぶ走りがよくなった。当初指摘していたディスクロードのネガがかなり小さくなりました。でも同時に高価格化が進んで、ハイエンドバイクは手が届かないところまで行ってしまった。自転車エンゲル係数が相当高いと自負している僕でも、最近のハイエンドバイクは完全に他人事です。「170万円ですかぁ。へぇー」ってなもんで。となると現実的には完成車価格40万円前後のミドルグレードになる。でも残念ながら、ミドルグレード以下のディスクロードの走りはまだまだだと感じます。

小畑:そこらへんは走りが重いものが多いですね。

安井:はい。参考までに、飛ぶ鳥落とす勢いのスペシャライズドで比較してみます。2022モデルのターマックSL6スポーツディスクは税込み39万6000円。コンポは105でホイールはDTのR470、重量は8.1kgほど。10年前のターマックSL3エキスパートは税抜き40万円、アルテグラでフルクラム・レーシング4で7.1kgほどだそうです。

小畑:なるほど。

安井:ちょっと価格帯を上げて、キャノンデールでも比べてみます。2022モデルのスーパーシックスエボディスクアルテグラDi2、73万7000円。カーボンホイールを履いて7.7kg。2012モデルのスーパーシックスエボ1は、デュラエース完成車でホイールはキシリウムSL、75万弱で6.4kgほどだったそうです。リムブレーキとディスクブレーキで構造が異なるうえ、時代もコンセプトも違うのでこの比較にあまり意味はなく、あくまで数字のお遊びですが、「ほとんど同じ値段で1kg強も重い自転車になる」という事実は事実。とはいえユーザーの乗り換えは進んでいて、昨今新車に買い替えた人はさすがにディスクロードが多いでしょう。その結果、「思ったほど走りがよくない」という声を方々で聞くようになりました。

小畑:お客さんでもいますね。「期待していたほどじゃなかった」という人が。

小畑 郁。1976年、東京都生まれ。中学生の頃からなるしまフレンドに出入りし、そのまま就職。現在はなるしまフレンドでメカニックを務める。圧倒的な知識量と優れた技術は日本随一。アマチュアレーサーとしても有名で、現在はリオモ・ベルマーレ・レーシングチームに所属しJプロツアーを走る。

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