※前編はこちら

高岡亮寛

サーヴェロと出会い再びレースの世界へ

公私共にこれまで多くのサイクリストと出会ってきたが、熱心に競技に取り組んできた選手はそのキャリアに終止符を打つと、そのまま自転車の世界から遠ざかることも決して少なくはない。彼らにとってペダルを踏む行為は“勝利”という自己表現の手段に他ならず、自転車に乗ることの根源的な魅力である“自らの力で移動する喜び”“風を切る喜び”“機材と一体となる喜び”といった感覚は、心の片隅なのだろう。それ故“勝利”という目標がなければ自転車と距離を置くのは必然であり、それは別に悪いことはない。人の数だけ自転車との関わり方があるのだから。

本稿の前編でも記したが、学生の頃の高岡は冷静に“自らが輝ける場”を冷静に分析して、それに向かって努力を一つひとつ積み上げることのできる、目標に対して明晰な選手といった印象を持つ。それだけに冒頭にも述べたように、卒業したらあっさりと自転車を止めても別に不思議はないと想像していた。

高岡:就職(2001年)してからというもの、自転車に乗るのは月に1回くらいでした。たまに体を動かすと気持ちいい程度で、自転車も大学時代(学連登録時)に作った三連勝のクロモリのロードバイクをそのまま乗っていました。当時はレジャーという感覚で、2002年には会社の同じフロアの人たちと「イベントに出ましょう」という感じで、お揃いのジャージも作って富士チャレ(富士チャレンジ200㎞)を走り、その勢いで「ツール・ド・おきなわ」にも参加することになって。おきなわのコースは楽しかったですね。

recommend post


interview

冷静と情熱の間に――。高岡亮寛の自転車人生(前編)

U23世界選手権出場者、外資系金融機関のエリートサラリーマン、「Roppongi Express」のリーダーでありツール・ド・おきなわの覇者、そしてついには東京の目黒通り沿いに「RX BIKE」のオーナーに――。傍から見れば謎に包まれた人生を送る高岡亮寛さんは、一体何を目指し、どこへ向かっていくのだろうか。青年時代から親交のあるLa routeアドバイザーの吉本 司が、彼の自転車人生に迫る。

2020.05.30

impression

注目5モデルを高岡&安井が比較試乗 |クリンチャータイヤの新たなヒエラルキー

ホイールを含め、ロードバイク用タイヤのトレンドは完全にチューブレスに向いている。しかしこの2022年、パナレーサー、ミシュラン、iRC、ヴィットリアというトップメーカーが相次いで注目の新型クリンチャータイヤを発表した。しかも、チューブレスの悪癖がいまだ改善されないことに業を煮やし、クリンチャーへと回帰するサイクリストも散見されるようになった。そこで、評者に高岡亮寛さんを迎え、安井行生と共に注目の最新クリンチャータイヤに試乗してもらった。最新クリンチャータイヤの現状を知り、最良の1本を決めるために。

2022.10.17

interview

ビルダー4名が語る、 金属フレームのこれから(前編)

年齢も性格もビジネスの形態も使う素材も考え方も違う。しかし日本のオーダーフレーム界を背負って立つという点では同じ。そんな4人のフレームビルダーが、各々のフレームを持ってLa routeの編集部に集まってくれた。金属フレームの可能性について、オーダーフレームの意味について、業界の未来について、モノづくりについて、忌憚なく語り合うために。その会話の全記録。

2020.04.24

column

タイムに願いを

ある日、ひょっこり安井の手元にやってきた2017モデルのタイム・サイロン。それを走らせながら、色んなことを考えた。その走りについて。タイムの個性と製品哲学について。そして、タイムのこれからについて―。これは評論ではない。タイムを愛する男が、サイロンと過ごした数か月間を記した散文である。

2020.04.24