先日公開したDAYS「グラベルロード(?)がやってきた」で、こんな暴言を吐きました。

「さらにコンポがシマノの黒歴史である6700系アルテ」

この“黒歴史”というワードに、数人の読者の方からリアクションがありました。その中の一人は、愛車3台中、メインの2台を6700系で組まれているとのこと。

ときには辛辣なことも書かねばならない評論屋として、最も辛いことは何かと言われれば、評価の対象を所有・愛好されている方を不愉快にさせてしまう可能性があることです。自分のバイクのコンポを“黒歴史”などと書かれては、いい気はしないでしょう。
といっても、今回メッセージを寄せてくれた方は、怒りやクレームではなく、「自分の自転車道を究めるための糧として、具体的に何を理由に“黒歴史”と書かれたのか知りたいのです」というメールでした。「あとは自分で感じて考えます」と。

La routeの会員さんたちは、本当に大人で成熟された自転車乗りの方々だと実感します。このような読者の方に恵まれて幸せだと感じます。ならば曖昧な笑顔で誤魔化すのではなく、こちらも真っすぐぶつかるのが礼儀でしょう。

基本的には、7900系デュラエースも6700系アルテグラも構造は同じなので、欠点も同じ。
この記事で書いたことがそのまま6700系にも適用されます。具体的には、ブラケットの太さ、握りにくさ、変速レバーの動きの重さ、緩慢な変速フィール、整備性です。

ただ、7900系・6700系がデビューした当時、あるプロ選手はこんなことを言ってました。

「僕は7800系より新型(7900系・6700系)のブラケットのほうが好きですね。細すぎて手が余らないし、手の平の面圧が下がって長時間走っても快適なので」

取材ではなく、雑談の中での言葉なので、これはおそらく本心だと思います。

使う環境によっても変わるかもしれません。
振動が少なく、ブラケットを軽く握ったまま静かに走ることが多いヒルクライムなどでは、シフトフィールが走行感に与える割合が大きくなるので、そこにこだわりたくなります。動き的にも音響的にも静かなので、「レバーを倒して爪がカチリと噛み合う」というシフトフィールが、相対的に際立ってしまうのだと思います。

しかし、ブラケットをガバッと握り、上下左右の振動に晒されながらあたふたと変速するグラベルロードでは、シフトフィールがちょっと濁っていても、ブラケットが多少太くても、さほど気にならないものなんですね。これは自分がグラベルロードを買って初めて気付いたことでした。
だから最初は「そのうち78か9000以降かカンパに変えよ」なんて思っていたのですが、最近は「グラベルなら67のままでもいっかな」に変わりつつあります。

要するに僕がいくら辛辣なことを書こうと、使い手がいいと思えば、それはいいものだということです。だから「安井がこんなことを書いてたけど、それにはこういう理由があるんだな」くらいに思っていただければと。
ちなみに、まだ嫁にはバレていないようです。

(安井行生)