独創的な空力アプローチのS5で世を驚かせ、ポガチャルとヴィンゲゴーの名勝負となった今年のツールを制覇し……と、戦闘マシンの作り手として一級となったサーヴェロ。一方、ソロイストやカレドニアで「ファン」の部分もないがしろにしない。

そんなサーヴェロを取り扱う東商会が、埼玉県川口市にショールームをオープンさせたというので、行ってきました。最寄りの西川口駅からてくてく歩くこと数分。開店祝いの花に囲まれた建物の1階と2階がショールーム(埼玉県川口市西青木1-23-1)となります。

なぜ川口なのか? それは、この建物が東商会のオフィスだから。これまで1階と2階にあったオフィススペースは3階へと移動させ、1~2階をリニューアル。コンセプトは、「東商会が取り扱う製品を、見て、乗れて、試せる場」というもので、バイクやホイールの試乗、シューズの試し履きも可能となります。将来的には、取り扱いブランドのオーナーズミーティング、ショップ向けの講習会、一般ユーザー向けの試乗会なども行う予定とのこと。

営業時間は平日の10~12時/13~17時で、事前に予約が必要です。えー土日に行きたいのに……という声が上がるのは東商会の方々も十分承知されていましたが、スタッフの方々のお休みやイベントへの出展などを考えると、当面は平日のみ営業というのも無理からぬことでしょう。オープンは8月1日。それまでに予約フォームが用意されるとのことです(追記/予約フォームがオープンしました)。

サーヴェロやラピエールに加え、ライトウェイトという高級ブランドの取り扱いを開始した東商会ですが、それに見合った洗練された内装です。このショールームオープンに合わせて、東商会のロゴも一新されました。
1階はサーヴェロ、ラピエールなどの完成車が展示されます。黒や赤などのカラーは分かりやすいですが、最近増えてきた絶妙なカラーのフレームは、カタログやウェブ上と実物とでは結構な差があるもの。ここなら実物を見ることができます。全モデルではありませんが、これらのバイクの試乗も可能。
2階はライトウェイト、イーストン、トーケンなどのパーツ類。もちろんライトウェイトも試乗できるようになります。
トーケンのビッグプーリーの性能を体感できるような展示も。
東商会が新たに取り扱いを始めたイタリアのシューズブランド、ユードッグも全サイズ揃っており、試し履きが可能になる予定。ただしここでの購入は不可。「スポーツバイクにはメンテナンスなどが必要であり、ショップとユーザーとの付き合いが不可欠」という判断から、東商会は直販は行わない方針だそうです。
2階にはメカニックスペースも。その前に並んだキッズバイクも試乗可能!
これはフジチカ、キーパーコーティング、日泉ケーブルなどの日本ブランドを集めたコーナー。
ヴィンゲゴーのサイン入りジャージも展示。今年のツールにスタッフが視察に行った際にゲットしたものだそう。

近年、代理店やメーカーがショールーム的機能を持ったスペースをオープンさせる例を耳にするようになりました。2017年にグランフロント大阪に誕生したSHIMANO SQUAREや、昨年、同じ荒川沿いに東京サンエスがオープンしたSAN-ESU BASEなどがその一例です。

僕が自転車を始めた頃は、自分の自転車生活と密接に絡むのは仲間とショップであり、代理店ではありませんでした。代理店の方々と直接やり取りすることはなかったし、意識もしていませんでした。好きなメーカーはたくさんありましたが、代理店がどこなのかまでは知らなかったくらい。見えざる存在。意識外の存在。

しかし今は違います。SNSのDMやコメントなどを通してユーザーがダイレクトにメーカーや代理店にコンタクトできる時代。ユーザーと代理店/メーカー間の距離感がかなり近くなった。実際、ここ数年でユーザーから直接東商会に問い合わせ来ることが増えたのだそうです。

そういう時代の変化に対して、代理店/メーカーのスタンスは「一般ユーザーと積極的に関わっていく」「必要最低限の返答はする」「全く関与しない(ユーザー対応はショップに任せる)」と分かれます。どれが正解というわけではないでしょうが、東商会は一番目の道を行くことを選んだと。このショールームオープンはその一部でしょう。

製品そのものの良し悪しだけでなく、メーカーとユーザーの間に位置する代理店の性格も、市場での製品の最終評価に影響します。メーカーとしても、「どの代理店だったら時代の変化に合わせて製品を上手くアピールしてくれるか」という視点で各国のビジネスパートナーを選ぶようになるでしょう。オウンドメディアという言葉もありますが、代理店やメーカーが「ものを作る/売る」だけでなく、「ユーザーに伝える」という役割を担い始めました。その流れが自転車業界にも到達したと感じます。

(安井)