105に続き、マドンも新型になりましたね。
2015年にデビューした第5世代で純粋なエアロロードとなったトレック・マドン。シートチューブに快適性を高めるISOスピード、専用ブレーキキャリパー、操舵時にブレーキキャリパーとの接触を避けるためのベクターウイング(通称パカパカ。あれを見たときは開いた口が塞がりませんでした)を装備するなど、トレックらしく技術を重ねに重ねて到達したその走りは、エアロロードとして当代最高レベルに達していました。

2018年モデルの第6世代は明確なキープコンセプト。ISOスピードをトップチューブに移して快適性をさらに高めたこと、そしてディスクブレーキモデルの追加が大きなトピック。2020年の素材変更(OCLV700 →OCLV800)、BB規格変更(BB90→T47)というマイナーチェンジをはさんでいますが、イマイチだった第4世代→一気に完成度を高めた第5世代の変化に比べると、第5世代→第6世代(前期・後期)はブラッシュアップというべきものでした。

第6世代デビューから4年、完全新作となる第7世代のマドン。目を引くのはやっぱりシートチューブです。上端部分で二股に分かれており、シートポスト下に大きな穴がぽっかりと開いています。ISO FLOWテクノロジーと呼ばれるこの形状は、快適性というよりバイク後半の気流と整えて空力性能を高めるためとのこと。可動機構であるISO SPEEDは重量削減のためか廃止されました。レーシングバイクとしては懸命な判断だと思いますね。

風が最初に当たるハンドルセットにも手が加わりました。前作は2ピースでハンドル角が調整できましたが、新型ハンドルは完全一体型に。しかもドロップ部よりレバー取り付け部の幅が3cmも狭くなっているそうです。幅の広いドロップ部ではコントロール性を高め、幅の狭いブラケット部では空力を高めるという意図だとか。しかしこの個性的なサイズ展開の専用ハンドルは冒険です。ノーマルのハンドルも使えるようですが。

なお、数値上では「前作比で時速45km時に必要パワーを19ワットも削減する」と発表されています。ホンマかいな、と言いたくなるほどの数字。前作でさえ、走ると明らかに空気抵抗の少なさを実感できましたから。前作比で300g(フレームで150g、ハンドルセットで150g)の軽量化も実現しているそうです。

本日発表されたのはトップグレードのマドンSLRで、以下の5種類の完成車。

(初回入荷完成車)
・マドンSLR9 eTAP(スラム・レッドeTAP完成車、175万6000円)
・マドンSLR9(シマノ・デュラエース完成車、166万8700円)
・マドンSLR7(シマノ・アルテグラ完成車、130万5700円)
・マドンSLR6(シマノ・新型105完成車、115万5000円)
(来春入荷予定の完成車)
・マドンSLR7(シマノ・アルテグラ完成車、124万4100円)

105完成車が100万円オーバーとはなかなかインパクトがありますが、「ハイエンドフレームに105が付く時代になった」と言うこともできます。ホイールはカーボンリムのアイオロスになるようですし。ミドルグレードのSLは継続です。

105完成車のSLR6。写真のようなダウンチューブにロゴが入らないシンプルなカラーも。

しかしこのISO FLOWテクノロジーの形状には驚きました。没個性化が叫ばれる昨今のエアロロードの中で、これはそこから逃げてきたトレックがたどり着いた一策であるようにも思えます。

従来、自転車の空力性能に影響するのは気流が最初にぶつかるハンドル・フロントホイール・フォークなどで、フロントホイールや脚にかき回されて乱流となった中を通過するシートチューブやリヤホイールの影響度は少ないとされてきました。

サドルポジションの制限というデメリットを受け入れてまでシートチューブ上部を双胴にする効果がどれほどなのか。気になるところです。形状を見る限り、この「ISO FLOWテクノロジー」は真正面からの風ではなく、斜めからの風に対して効果を発揮しそうですが。

試乗車をお借り出できたら、しっかりと試乗記をお届けしたいと思っています。

(安井)