街も山も激坂も
ピロン。
ある日、スペシャライズド・ジャパンから1通のメールが届きました。
内容は「ピーター・デンクさんの取材許可がおりた」とか「新型車発表」とか「La routeが書いた記事へのクレーム」とかではまったくなく、「e-MTBを使ったメディア向けツアーをやるのでよかったら参加しませんか?」(かなり要約)というもの。
何を書くかわからないLa routeになぜ声をかけてくれたのかは不明ですが、子ども乗せ付きの電動アシスト車を除けば、僕も安井も日本国内ではe-バイク童貞。
いい機会だし(…せっかくなの乗ってみたい…)、場所は小田原だし(…割と近い…)、終わった後は温泉に入れそうだし(…温泉好き…)の3コンボで、「ぜひ」と申し込むことにしたのです。
今回のプランナーを務めたスペシャライズドジャパンの板垣 響さんによれば「街からオフロードコースまで、これ1台でいろんな楽しみ方ができるe-MTBを体験してみてください」とのこと。ちなみに、ノンアシスト自転車のことを「ペダルバイク」と呼ぶことも今回のツアーで初めて知りました。
朝の小田原駅。通勤のあわただしい時間のなか、僕と安井ふくめ、自転車専門誌やクルマ雑誌などいくつものメディアの皆さんが集合。
使い方説明のあと、本日のために用意された「リーヴォSLエキスパート・カーボン」にご対面。これだけ数が揃うと壮観です。
早速、リーヴォくんに乗って小田原の街中へ。
小田原かまぼこの発祥の地といわれる「鱗吉」で自然薯棒を頬張り…
目的地のフォレストバイクへ。まずはコース説明と簡単な乗り方レクチャー。小田原にMTBのコースがあるなんて知らんかった…。
早速コースイン。
文科系自転車メディア(?)のLa routeチーム。MTBコース走行初体験の僕は転ばずに走るのがやっとでしたが、安井はご覧の通りすいすいとコースを駆け巡っておりました。
コースは下り基調なので、走行後に再びコースインするためには舗装路を上る必要があるんですが……e-MTBならその上りがまったく苦になりません。
その後、1時間ほどフリータイムがあったので、「せっかくだから」と二人でコースをグルグル。ペダルバイクだったら死んでたかも…。
デコボコのコースを目の前に、元オリンピアンで現在スペシャライズドジャパンに勤める小田島(片山)梨絵さんにレクチャーを受けるの図。
「楽しいのが一番ですよー。ははは」と話す小田島さんの説得力たるや。
「楽しそうな感じで撮りましょっかね」という小田島さんの掛け声による貴重な3ショット。小田島さん、顔ちっちゃ。
漁港でパチリ。
そのあと近くの激坂に。路面のコンクリートにドーナツ型の凹みが付いていることからもそのキツさを想像していただけるはず。でも…e-MTBなら鼻歌交じりで上れます。
さらに進むと、小田原の街が見渡せる絶景スポットが。
ご褒美は「一夜城ヨロイヅカファーム」で。
故・川島なお美さんのご主人、鎧塚俊彦さんが経営するスイーツショップが小田原にあったとは。
バイクネタも少し。コラム内には携帯用工具が隠されてます。
個人的に一番驚いたのがこちら。最近のMTBは、eもペダルバイクもサドル高の半自動調整機構が付いているらしい。ボタンを押すとサドルがビヨーンと上にあがり任意の場所で止めることができるんです。
走りながらの調整もできるので、オンとオフをまたぐようなライドのときはかなり便利。小田島さんいわく「最近のMTBは、足のストロークを生かした走りが求められることもありますからね」とのこと。なるほど。
今回、アテンドしてくれたのは益田大貴さん、小田島さん、板垣 響さん、板垣奏男さんの4名。ちなみに板垣さんはガチの兄弟です。
かなり駆け足でしたが、ツアーは「街」「MTBコース」「山」というまったく異なるシチュエーションをe-MTB1台で走り回る…というもので、e-MTBの守備範囲の広さに正直驚かされました。
そして写真を見ての通り、めちゃくちゃ楽しかったです。自転車における楽しさには疲れも比例してついてくるものですが、アシストがついているおかげでそれがほぼないんです(疲労も楽しさのひとつという議論はさておき)。
また、ペダルバイクでグループライドするとき、体力と脚力と機材の差が顕著にでますよね。速い人は先に行き、そのぶん早く休憩スポットに到着する。遅い人は到着するのも遅いので、休憩スポットに到着して「ほっ」としたころに「さあいこうか」となり休憩時間も短くなる。距離を重ねれば重ねるほどそれは遅い人にとって、重荷になるのです。
でもe-MTBの場合、イコールとまではいかないがその差が限りなく減る。これらはe-MTBに限らずe-バイク全般に言えることですが、これはかなり大きなポイントだと感じました。
今回試乗したリーヴォSLエキスパート・カーボンの乗り味についても少し。初めてのe-MTBなので、このバイクの良しあしをあれこれ言う知見も資格もないとは思っているものの、昔、ランドローバーのディスカバリーに長期間乗らしてもらっていたときのあの感覚を思い出しました。
一見ふわふわした足回り…なんだけど街乗りではスクエアなボディと高いアイポイントが生む安心感があり、いざオフロードコースを走るとノーマルタイヤでも恐ろしくよく走り、深夜の首都高3号線(クネクネしてる)もドライバーが意思をもってハンドルを操作すると想像以上にキビキビ動く。
ただし高速道路のハイスピードクルージングは苦手だったし燃費も最悪でしたが(ハイオク仕様で1L/4~5km)、今でもまた乗ってみりたいと思うほど魅力的でした。
リーヴォSLエキスパート・カーボンもいうなればこのヨンクやSUVの感覚に近いんです。
車道のデコボコや段差もまったく気にならないし、激坂だってアシストがあるからラクに登れる。それでいて抜群の未舗装路における走破性。一度も転倒することなく、そして楽しくオフロード走行を楽しめたのは、間違いなくマシンの性能が技術をカバーしてくれていたからだと感じます。
でもね、車両価格は約100万円です。そう、低グレードの軽自動車なら1台買えてしまうお値段。
「自腹で買いたい?」と聞かれたら……残念ながら僕は買いません。
でも「可能性を感じたか?」と聞かれたら、むしろ可能性しか感じませんでした。
e-バイクが狙うべきターゲットは、ペダルバイクの酸いも甘いも知っているガチのサイクリストではなく、そもそも自転車とは無縁のひとたち。つまり僕ではなく、富裕層の方々やクルマを日常の足としている人たちなのではないかと。っていうほど僕はガチではないですが。
僕の地元・岡山県は、1人1台クルマを所有して移動するのがほとんど。うちの両親も含めた多くの人の移動はすべてドア to ドアが基本で、それが当たり前の社会ができあがっています。自転車に興味がない人からすれば「え、チャリ?」みたいな風潮も少なからずあるし。その結果、蔓延する運動不足とそれに伴う健康寿命の低下などなど。
でもそういう人たちがクルマではなく、e-MTBないしe-バイクに乗るようになったら、通勤渋滞(場所にもよりますが地方都市の交通渋滞はなかなかスゴイです)は減るし、自転車そのものが見直されるキッカケになるんじゃないか、などと思うわけです。「ペダルバイクを広めればいいのでは?」とも思いますが、クルマ生活にどっぷりな人にノンアシストのペダルバイクって結構なハードルだと思うので。
自転車のエンジンは自分であるべき! という意見の方は割といらっしゃいますが、僕は「アリ」だと思います。
たとえば前述したクルマの移動手段の代替えとして、たとえば旅行先のレンタルバイクとして、人や住む場所によってはこれ1台あればその人のライフスタイルどころか、人生を変えてしまうかもしれません。選択肢が増えることで、e-バイクを入り口に、ペダルバイクに興味を持つ人がでてくるかもしれませんし。
交通ルールの啓蒙などの新たな問題はいろいろと出てくるかと思いますが、これが普及して一般化したら僕らペダルバイカーにとってもいいことづくめ、と思うのは僕だけですかね。
(栗山)
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