スペシャライズドの新型車発表会に行ってきました。新型車…とはいっても、ロード、MTB、クロスバイク、E-bikeのどれでもなく、なんとキッズバイクとのこと。

すでにDAYSの3部作(自転車を買う(その1)自転車を買う(その2)自転車をもらう)でもお伝えした通り、僕も安井も絶賛子育て中なので、キッズバイク選びの難しさは身をもって感じています。
子どもの成長は著しいため、ジャストサイズの自転車を選べば半年後には乗られなくなるのは見えている、かといってちょっと大きめサイズを選べば少しの間ガマンさせることになってしまう帯に短し、襷に長し……な状態なんです。どれだけ大人が「いい!」と言っても乗るのは子どもですしね。

そんななかスペシャのような大手メーカーがキッズバイクのためにわざわざ発表会をやるということは、何かあるんだろう…(メーカーがキッズバイクの新型車発表会をやるのはたぶん異例)ということで、会場であるスペシャライズド銀座に赴いたわけです。

JETTアンベール
ちゃんとアンベールも行われました(アンベール前にスペシャライズド・ジャパンのSNSで公開されてましたが…)。

ベールから出てきたのは、JETT(ジェット)の名を冠した3モデル。

JETT 16 SINGLE SPEED(55,000円)
JETT 20 SINGLE SPEED(日本未発売)
JETT 20(60,500円)
JETT 24(66,000円)

価格は他メーカーに比べるとややお高めで、パッと見はふつうのキッズバイクに見えますが…

Specialized-JETT

僕ら的に興味深いポイントが3つありました。順を追って説明しましょう。

(1)スペシャライズドに勤める社員の子どもたちを対象に、スペシャが展開するバイクフィットサービス「リトュール」でデータ解析を行ってバイクを設計。要はオトナの感覚ではなく、科学的に子どもの動きを分析したというわけです。スペシャライズド・ジャパンの板垣 響さんいわく、「ここまでやっているのはうちぐらいではないでしょうか」とのこと。

ガチです。(出典/スペシャライズド・ジャパン)

(2)大胆にもクランクにネジ穴を2つあけ、クランク長が選べるようになっています(20、24インチのみ)。

JETTクランク
シンプルながらも「なるほど!」なアイデア。他メーカーでもやっているところはあるんでしょうか。ペダル根本横にある黒いポッチがまさにそれで、使わないときは目隠しされてます。剛性は間違いなくさがるでしょうけど、キッズバイクなら問題ないという判断なのでしょう。

(3)ペダリング時の動きを妨げないようQファクター(ペダル取付け部根本の左右間距離)を通常のキッズバイクよりも20mm狭く設計。たしかに子どもの足の動きが、まるでカニのようなときがあるんですが、Qファクターを縮めることで気持ちよくこげるようになるはずです。

JETTチェーンステー
チェーンステーの薄さからもその苦労が見て取れますよね。

そのほか専用サドルやリーチ調整可能なハンドルバーを搭載するなど、実車を見るとキッズバイクに対するチカラの入れ具合が伝わってきました。個人的に興味深かったのが、我が家も購入した「ヨツバサイクル」という言葉がプレゼン時に何度か出てきたこと。

ご存じない方のために説明すると、ヨツバサイクルはダートフリークが日本国内で展開しているキッズバイク専門ブランドで、12、14、16、18、22、24、27.5インチまで幅広いサイズでキッズバイクをラインナップ。さらにはロングテールバイク(!)や各種オリジナルパーツも扱っており、ここ最近じわじわと認知度をあげているんです。

「ライバルではありません」と断言してはいたものの、スペシャライズドにとって、気になる存在であることは確かでしょう。
残念ながら僕らはJETTに試乗できませんが、前にも書いた通り子どもは未来そのもの。こうやってキッズバイクに力を入れるメーカーが増えるのは自転車業界にとっても非常にいいことだなぁと思うのです。

 

ここからは余談ですが、かつての100円マックと同じように、メーカーとしては子どものころから自分たちの自転車に乗ってもらうことで、「ブランドそのものに愛着をもってもらう=大人になっても同じブランドを選んでほしい」という、思惑も当然ながらあるわけです。

いっぽうで子育て中の親目線でいえば、常にベストなサイズの自転車を買ってあげたいという想いはあるものの……それを買い続けるのはなかなかシンドイ。いくら調整幅があるJETTとはいえ、どこかでほんのわずかでも子どもにガマンを強いてしまう可能性があるわけで。

そんなこんなを踏まえると、むしろサブスクリプション方式(月額○○○円)で、常にそのメーカーのぴったりサイズのキッズバイクが乗られる…なんてビジネスをどこかのメーカーがはじめてくれたらいいのになぁ……。

(栗山)

スペシャライズド・ジャパン小松さん
プレゼン冒頭では、スペシャライズド・ジャパンの代表を務める、小松 亮さんが登壇。現在進行形で子育て中だそうで、最近お子さんに「ヨツバサイクル」を買われたそう。ちなみにプレゼン後に上記のサブスクのアイデアを提案したところ「それは面白そうですね!」との反応をいただきました。値段にもよりますが、意外と需要はありそうな気がするんですけどね。