底の知れない「深み」を見るために

4年ぶりにランブイエの街へやってきた。意気揚々とした何千ものサイクリストがスタートを今かと待ち受けるランブイエ城前の光景は、4年前とあまり変わらない。ちょうどこの4年で世界は新型コロナウイルスによって激動を経験したけれど、その狂騒はどこへいったのかというぐらい、変わりない。パリ〜ブレスト〜パリ、1,200kmの旅が2023年も始まろうとしている。

4年に一度開催されるブルベの祭典、パリ〜ブレスト〜パリ(以下PBP)。日本のサイクリストの間でもすっかり知られるようになった長距離ブルベの最高峰イベントだ。その名の通りパリをスタートして、フランスの西の果てであるブルターニュ地方のブレストへ片道600kmを走り、そして戻ってくる往復1,200km。この1,200kmの旅路が、今日、世界中のサイクリストを魅了している。

2023年のPBPには6,810名がエントリーを果たした。

まずは数字からこのイベントの概要をみてみよう。2023年大会のエントリー者数は6,810人。前回2019年からは2%増(6,674人)となったが、概ね7,000人弱で落ち着いている。このうち女性参加者は493人だ。最年少参加者は男女ともに18才で、最年長は85才。すべて男性だというが、80代の参加者が5名いるという。

今大会がPBPに初めて参加する人の割合が64%を数える中で、13回目(!)の参加となる者が2名いるというから驚きを隠せない。そのうちで最も古い参加年は1971年だという。1971年とは、ツール・ド・フランスにおいてはエディ・メルクスの全盛期。半世紀以上も前である。PBPとともにある人生、ということになるだろう。

1891年に創始され、当初の参加資格は「フランス人であること」だったPBPも、近年は国際化が著しい。国別参加者ではもちろん開催国フランスが最も高い数値を誇るが(1,973人)、ドイツ(759人)、イギリス(554人)、アメリカ(461人)と続き、日本はイタリアに次いで6番目に参加者の多い国となっている(364人)。日本の次にはインドが287人で続くことを考えると、ワールドツアーよりもずっと国際的な自転車イベントであることがわかる。参加する国と地域は71を数えるとのことだ。

今年の夏は男女ツール・ド・フランスと、グラスゴーの世界選手権をそれぞれ現場で見てきた。だからこそ、この滞欧取材の最後にPBPを見てみたかった。その思いは4年前のPBPに遡る。2019年、初めて自分の目で見たPBPの底の知れない「深み」がその後ずっと私を捉えて離さなかったのである。

2019年、初めて実地で見たPBPには衝撃を受けた。

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